かしこみもうす
We Bow Before You
事前情報
舞台:現代日本
ジャンル:クローズド
推奨人数:2~4人
プレイ時間:3時間前後
準推奨技能:オカルト、交渉、基本探索
注意:純日本人の家系であること。新規探索者が望ましい。既存のキャラの場合は特殊な設定が付く。
技能値の上限は70%とする。
また、HOの特性上このシナリオにおいては強制されるものを除き、KPから何の技能が振れるかを伝えてはならない。
《あらすじ》
憎らしい程の晴天の中、探索者達は人生の恩人とも言うべき人物の葬儀へ参加する…。
HO
探索者は全員、『自分の本当の正体』を持っている。
正体は以下から選べるが、探索者同士で重複しては選べない。また選べる正体は一つのみである。
①イタコ
あなたの家系は
②祈祷師
あなたは物心ついた時から
③飯綱 使い
あなたの家系は代々続く
④霊能者
あなたは昔から未来予知ができる、超能力の持ち主である。あなたは技能『心理学』に【その他技能ポイント】として+30ポイントを振り分けることができる。また技能『予知』(初期値1%)ロール成功で、MPを1消費して自分の周囲にある『気になるもの』を見つけ出すことができる。
※『気になるもの』…ここでは何らかの技能を振る事ができるギミックのことを指す。
⑤天狗
あなたは
⑥猫又
あなたの本性は猫又である。今は人間に擬態して生活しているが、本来の姿に戻ればその真の能力が解放される。あなたの本質は獣であるため、あなたは銃火器を使用することができない。本来の猫又としての姿に戻る、もしくは再び人間に擬態するためにはMPを1消費する。また技能『
⑦妖狐
あなたの正体は稲荷神社に憑く狐の一族であり、現在は人間に擬態して生活している。あなたの本質は獣であるため、あなたは銃火器を使用することができない。本来の姿に戻れば、妖狐としての本領が発揮される。妖狐の姿に戻る、もしくは再び人間に擬態するためには、MPを1消費する。またあなたは妖狐の姿となることで技能『回避』ロールに+20ポイント得られるほか、技能『狐火』(初期値1%)ロール成功でダメージを与えることができる(2d6+スタン効果)。
⑧古狸
あなたの正体は四国地方で霊力を得た古狸であり、現在は人間に擬態して生活している。あなたの本質は獣であるため、あなたは銃火器を使用することができない。本当の姿に戻ることで、その真価は発揮される。古狸の姿に戻る、もしくは再び人間に擬態するためには、MPを1消費する。あなたは古狸の姿になった際に技能『噛みつき』(古狸時初期値25%)ロール成功でダメージを与えることができる(1d10、DBは乗らない)。更に技能『変幻自在』(初期値1%)ロール成功で、木の葉を任意のものに変化させられる。『変幻自在』には木の葉を1枚とMPを1消費しなければならない。
真相
魔術師である
ちなみに押鶴(別シナリオのNPC)とも縁がある。
本編
導入
「神納木さんが死んだ」
その知らせは突然やって来た。人生の恩人ともいうべき人物の訃報に、ある者は動揺し、ある者は深い悲しみに浸るだろう。貴方達も例外ではない。
貴方達は互いのことは知らない。しかし共通点があった。一つは神納木に恩義を感じていること、そしてもう一つは普通の人間ではあり得ない特質を持っているということだ。この特質によってこれまで様々な苦労をしてきたが、それを助け、現代の人の世でまっとうな暮らしが出来るように支えてくれたのが神納木なのだ。彼の元を離れた今でも尚、貴方達の胸にはそのことへの感謝の思いがある。
そうして今日、急ぎ彼の葬儀へ参加したのだ。周囲の会話が自然に耳に入り、彼は以前から患っていた病が悪化し、瞬く間に息を引き取ったと知る。そういえば最後に会話をした時にどこか体調が悪かったような、そんな気がする者もいるかもしれない。
葬式は本人の生前の希望で厳かに行われた。流れるように通夜が執り行われ、貴方達は今通夜振舞いの席に着いていた。家族や知人同士で来た者はそれぞれ同じ卓を囲み、一人で参加したものは一人で来た者同士で卓を囲んでいた。
同じ卓を囲む貴方達は初めて対面する。しかし何故だろう、どこか自分と同じ匂いを感じる気がする。
※RP可能
暫く飲食で沈んだ気持ちを紛らわせていると、不意にPC1の隣にちょこんと女の子が座った。見れば今時珍しい古風な紅い着物を着た、おかっぱ頭の子である。葬式で着るには余りにも不釣り合いで、黒い喪服の合間にその存在はあまりにも浮いている。
★強制アイデア:彼女が人ならざる者であると気づく。
少女はPC1にきょとんと声をかける。
「神納木、もういないの?」
「そっか。じゃあこのお家ともお別れね。寂しいな」
「神納木がいないお家なんて、意味がないわ…でも、どこに行こう?」
★オカルト:彼女が座敷童ではないかと思う。
★目星:他の席の人々はどうやら彼女の存在に気付いていないようだ。
★強制信用:成功したPCへ「PCの家に行こうかな?」→「いいよ」と答えることで座敷童が家に住み着くようになる。幸運or技能のどれか一つが+10される。
そうして神納木の葬式が終わった。
帰宅-通夜会場
通夜が終わり、探索者達はくたくたになって帰り着いた。幾度経験しても慣れることのない行事、それも棺に納められていたのが恩人とあれば尚の事。探索者達は暗澹とした思いを抱えながら眠りについた。
すると、微睡みの中で探索者達は、自分の身に異変が起きていることを感じ取る。
★強制POW×5:強力な呪いの力を感じる。
まるで金縛りに遭っているかのように全身はぴくりとも動かず、それどころか身体がどんどん重くなり床に沈み込んでいくような錯覚までする。【SANc:1/1d3】
もはや息すらできないほどの重みに意識が朦朧としてきた…次の瞬間、突如として身体が自由になった。
慌てて起き上がってみると、そこは自分が寝た筈の場所ではなく、見覚えがあり過ぎる葬式の会場であった。つい半日ほど前に出席していた、神納木の葬儀場であり神納木の自宅でもある。
通夜会場は貴方達が見たものとよく似ている。畳ばりの大きな和室に紫の座布団が沢山敷かれている。周囲の壁は一か所のみ廊下へと続いておりそれ以外は白黒の幕が垂れ下がり、背後の一面だけが障子になっている。前方にはお坊さんの座る席、焼香台、菊などの花、木棺、そして写真が飾られている。周囲に探索者以外の人の姿はない。
焼香台・お坊さんの席:火は消えているらしく、煙は立ち上っていない。
★目星:火を点ける道具が見当たらない。
献花:菊を始めとした献花が飾られている。
★聞き耳:微かに瑞々しい花の香がして心地が良い。
木棺:小窓がついている。中を覗くと、青白い恩人が眠っているように死んでいる。
写真:恩人の遺影である。
★目星orアイデア:昼間に見た遺影は柔らかな笑顔を湛えた写真だったが、今目の前にある写真は何かを畏れているかのように顔を顰めている。
→じっと眺めていると、唐突に写真の中の恩人が動き、貴方達の背後の障子を指さした。【SANc:0/1】
障子:押しても引いてもびくともしない。
廊下
廊下に出ると左右に
「玄関」「通夜振舞いの部屋」「居間」「風呂」「台所」「私室」「庭」に行ける。
玄関
叩いても押しても引いてもびくともしない。
居間
小さな座卓と数枚の座布団のある質素な部屋。
奥に掛け軸があり、その前に何かがいた。それは牛のようだった。足の方にかけて濃くなっていくグラデーションのかかった黒い毛並みにがっしりとした身体で、蹄の辺りは毛に覆われている。尾も牛のそれであるが、それを牛たらしめない唯一の点が、顔にある。その頭部はなんと人間の少年の顔をしており、頭部に二本の牛の角が生えていた。この世ならざる生物だが、不思議と恐怖は感じない。それは、自分達と似た存在であるからか。
★オカルト:
その生き物/件は襖を開けた貴方達をじっと値踏みするように見つめた後、静かに話し出す。
「神納木の部屋に災いを為す者がいる。穢れなき火で悍ましき箱を祓うべし」
件は一呼吸置くと懺悔するように更に続ける。
「どうか頼む。私は伝えることしかできない。…本当は、神納木の死を防ぎたかったのだ」
伝え終わると貴方達が声をかける前に件は奥の掛け軸の中に入って行った。
※以降は探索者の呼びかけにまったく反応しなくなる。
※蠱術の箱を燃やすことのヒント
風呂
水色のタイルに覆われた、どこか懐かしさを感じる風呂場である。
浴槽から何者かがこちらをじっと見つめていた。唇のない口、丸く開いた瞳孔に黒光りする瞳、首元には左右に切れ込みのようなものがあり、胸から下は鈍色の鱗で覆われている。色彩の乏しい身体の中で、長い髪と背骨から生える魚のひれだけが鮮やかな茜色をしている。指の部分は水かきのようになっており、足の代わりに胴体から先は魚の尾ひれとなっていた。所謂人魚だろうか、貴方達にとっては自分達と同等の生物であると分かる。
そして、その生き物には左肩から先と腹部がちぎりとられたようになくなっていた。損傷部位から流れ落ちる赤い血で浴槽内もまた赤く染まっている。あまりにも惨い有様でありながらも、驚くべきことにそれは生きているようだった。【SANc:0/1】
★オカルト:人魚の血肉と喰らうと不老不死の身体を手に入れられるとされている。
人魚
「私の右手とお腹が『食い散らかす者』に取られてしまったの。きっと食べるつもりだわ。取り返してほしいの」
「外に出ないよう部屋に閉じ込めておいたのだけれど、開けておくわね」
※以降、通夜振舞いの部屋に入れるようになる。
通夜振舞いの部屋から人魚の腕と臓物を取り返して渡す。
すると人魚は腕と臓物を元の位置に戻し始めた。
「ありがとう。私の血肉には何の力もないわ、もし本当に不老不死の力があれば、神納木の命も救えたかもしれないのにね」
「そうだ。私の代わりに神納木に香典を上げてくれないかしら。私は、ほら…ご覧の通りだから」
「火がついていないなら…そうね、台所に行けば何か見つかるんじゃないかしら」
※以降、庭に『良からぬ者』が出現する。
通夜振舞いの部屋
風呂で人魚と話す前:微かに物音が聞こえるような気がする。襖は開かない。
★聞き耳:中で何かが暴れているような音が聞こえる。
風呂で人魚と話した後:襖を開けるとそこには何かがいた。
それは自分達より一回りは大きい、まるでヒキガエルのような化け物だった。脂っぽいヌラヌラとした身体はタールのように全身が黒ずんでいる。顔らしき部分に目はなく、鼻のあたりには短い震える触手が生えている。その右腕には鋭い槍のようなものを構えていた。【SANc:0/1d4】
★クトゥルフ神話:探索者が過去に出逢ってきたものと比べるとそこまでの悍ましさを感じない。
※狐憑きの生み出したムーン=ビーストもどきなので、実際よりもかなり劣化版となっている。
食い散らかすもの
STR:15 CON:11 SIZ:18 INT:7 POW:7 DEX:8
耐久力:20 db:+1d4
槍:25%/ 1d5+1+db
耐久力を0にすると黒い霧となって消滅する。
黒い霧は徐々に消えていき、畳の上には腕と贓物が落ちている。
台所
入った瞬間、貴方達は違和感を覚える。神納木の台所には以前入ったことがあるが、その時の記憶と今目の前にある光景は全く違っていた。冷蔵庫のあったところには数々の古めかしい
★目星:火種が、何か生き物の瞳のように見える。
★聞き耳:山椒の薫りがする。
★オカルト:この生物が西洋でいうところのサラマンダーに酷似していると気づく。日本ではサンショウウオにあたる。
サンショウウオ
「此処の火を使おうってのかい?悪いがそいつはできねえ相談だ。何しろ、ここの火がなくなったら、俺が凍え死んじまう」
「なんで火が欲しいんだい?…あぁ、神納木の為なのか…。でもなぁ…あんたらを本当に信用してもいいのかね。ああ、そうだ。庭に気味悪い化けモンがいるんだ。そいつをとっちめてくれれば、信じてやろう。あの野郎、俺が持ってる火を奪おうとしてきやがったんだ」
※庭の『良からぬ者』を倒す。
「あんたら、強いんだな。それに、あんたらからは俺と同じ匂いを感じる。それじゃ、約束通り、俺の火を渡してやるよ。…なんだ、あんたら、火を点けるモン、持ってねえじゃねえか」
葬儀場の蝋燭で火を点けられる。火を点けると、サンショウウオはニヤリと笑う。
「俺のとっときの清らかな火だ。せいぜい大事に使うんだな」
そしてそのまま眠るように眼を閉じ、動かなくなる。
庭
台所でサンショウウオと話す前は寺にありそうな大きな枯山水の庭。
話した後であれば『良からぬ者』がいる。
それは小さな泡のような何かで出来た不定形の塊。全身がタールのような真っ黒い巨体の前面にはチカチカと白黒に点滅する目のようなものが形成されたりなくなったりしている。その奇怪な口許から「テケリ!」と叫び声が聞こえた。【SANc:1d3/1d10】
★クトゥルフ神話:探索者が過去に出逢ってきたものと比べるとそこまでの悍ましさを感じない。
※狐憑きの生み出したショゴスもどきなので、実際のショゴスよりもかなり劣化版となっている。
耐久力を0にすると黒い霧となって消滅する。
◇良からぬ者
STR:28 CON:10 SIZ:30 INT:5 POW:5 DEX:3
耐久力:20 db:+1d6
押しつぶし50%/ db
私室
『食い散らかす者』『良からぬ者』を倒すと入れるようになる。
中に入ると人がいた。
痩せすぎの身体に細い顔の青年が、真っ黒い箱を前に念仏のようなものを唱えている。
何処か不気味な気配を感じる。
箱を奪おうとしたり、攻撃すると反撃してくる。
戦闘開始。
狐憑き
STR:12 CON:14 SIZ:10 INT:19 POW:20 DEX:14 APP:9 EDU:21
SAN:60 耐久力:12 db:なし
こぶし50%/1d3 回避20%
呪文:恐怖の注入(p256)、邪眼(p259)
狐憑きを戦闘不能にすると、その足元に彼の持っていた真っ黒い箱が転がり落ちた。
★強制アイデア:その箱に悍ましさを感じる。本能で「これを開けてはならない」と感じる。【SANc:1d3/1d6】
★オカルト:この箱の中に入っているのは神霊の力を得た何らかの蟲ではないかと考える。
黒い箱に触れると1ダメージ。触れた部分が火傷のようにただれる。
サンショウウオの火で箱に火をつけると箱が黒い煙を上げ燃え始めた。部屋に悪臭が充満する。そして、箱から耳を劈くような悲鳴が溢れだした。
「死ね!死ね!神納木も貴様らも、決して逃がさない!死ねえええ!」
同時に家全体が揺れ出し、どこからから轟音が響き渡った。このままここにいるのは危険だと、誰ともなしに思うだろう。
※玄関は開かない。サポートしてくれた生物のいる場所は崩れ落ち、入ることも生存確認もできない。
END
通夜会場の部屋の前まで辿り着くと、これまでよりも一際大きな爆音が外側から轟いた。廊下が地震のように激しく揺れ、木製の床にミシミシと亀裂が走る。
慌てて貴方達が通夜会場へなだれ込むと、背後から再び悍ましい悲鳴が聞こえた。しかし通夜会場の中は何故か、空間が切り取られたかのように
不思議に思った探索者の前には、最初にこの部屋に来た時と変わらない、神納木の棺と焼香台がある。
焼香台に蝋燭の火を移す:焼香台から白い煙が立ち上る。それは先程、箱を燃やした時に出た煙とは異なり、心を浄化するような香りの漂う煙だった。
すると、棺の向こうに置かれた遺影が微かに動いた。そして懐かしい声が脳内に聞こえる。
「ありがとう、君達と出逢えて、良かった。助けてくれて、ありがとう。『袖振り合うも他生の縁』…いつか、どこかで、また出逢えることを心から願っている。最後に、君達の未来が良きものであるように…」
その声が語り終えた瞬間、探索者は強い睡魔に襲われ、抗うこともできずに眠りに落ちた。
次に目が覚めた時、探索者は自分達が元の自室にいることに気付く。窓から柔らかい日の光が差し込んできている。探索者達は神納木の最期の言葉を胸に刻み込み、彼の冥福を祈りながら、これからも生きていくだろう。
報酬
SAN回復:1d6
あとがき
タイトルについて
・祝詞(=神道におけるマナーを守った言葉)でよく使われるフレーズ。
・
・
・以上から、神様という、私達人間が直接ものを申すには恐れ多いほどの偉大な存在に対して、最大級の畏敬の念を持って、お祈りを捧げさせていただくという意味になる。
鹿島より:タイトルの英語「We Bow Before You」の直訳である「あなたの前に
件について
・牛の身体に人間の顔を持つ。
・未来のことを予言し、災いから逃れる方法を伝授するが、生まれて数日後(予言をした後)に死んでしまう。
・顔は子供の顔をしているともされる。
人魚について
・外国では人魚はジュゴンなどをモデルとされているが、日本における人魚は日本の深海生物であるリュウグウノツカイがモデルとされている。紅い髪と背びれの描写はリュウグウノツカイから。
・
黒い箱について
・
・蛇やムカデ、蛙など
・人にこの毒に当たると「一定期間のうちにその人は大抵死ぬ」と記載されている。
・勝ち残った蟲によって
・古代中国や日本では法律で禁止し、死刑になるほどの凶悪なものとして知られていた。
・具体的な呪いの解除や解毒方法は知られていない。
・
著作権表示
本作は「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by
Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION
2021/09/17 掲載